2026年8月号(新鮮な驚きを大切に!)
新鮮な驚きを大切に!
~子どもたちの知的好奇心を喚起~
園長 中村洋志
地球温暖化の影響もあるのかも分かりませんが、今年の夏も厳しい暑さの日々が続いています。この酷暑の中でも子どもたちの活動は衰えることはありません。子どもたちの興味関心は多岐にわたり、日々新しい発見を繰り返しているようにも思えます。大人にとっては、大したことに思えない体験でも、子どもたちにとっては知的好奇心の喚起し、それが子どもを大きく飛躍させる原動力になることもあります。
お茶の水女子大学名誉教授藤原正彦氏は、作家新田次郎と藤原てい夫妻の次男であり、日本を代表する数学者・哲学者であり、個人的にも大きな影響を受けた一人です。彼は、我が国を代表するような数学者でありながら「教育で大切にすべきことは、一に国語、二に国語、三四がなくて五に国語」という有名な言葉を残しています。私が広島時代に師事した著名な数学教育者故平林一栄名誉教授も同じ考えの方でしたので、藤原先生の著書を含め考え方に大きな影響を受けたのを覚えています。
藤原先生がある小学校で行った有名な授業があります。それは、「厚さ1ミリの新聞紙を何回折ると月まで届く?」という設問でした。当然、子どもたちは、何千回・何万回折ればいいのだろうと戸惑いながら挑戦します。悪戦苦闘しますが、なかなか結論が出ません。そこで先生が解説します。「新聞紙を1回折ると厚さは2倍。2回折ると厚さは4倍。3回折ると厚さは8倍といった具合に厚さは2の階乗倍となる。42回折ると2の42乗なので約4400000000000(正確には4398046511104)、0.1ミリ×4400000000000=440000000000(mm)、メートル単位に直すと440000000(m)、キロメートル単位に直すと440000(km)、月までの距離は約380000(km)とされているので厚さ0.1ミリの紙を42回折ると月まで届く厚さになる。」ということを伝えます。子どもたちは、この計算方法は知りませんが、たったの42回折ることで月まで届くことに驚き、感動の波が広がっていったのは当然のことです。ちなみに、51回折ると厚さは約2億2500万(km)までにもなり太陽まで届くと伝えました。これには、子どもたちだけでなく大人もみんな驚きました。新鮮な驚きは、子どもたちの新鮮な気持ちを刺激し、知的好奇心を喚起します。
実は、私自身も30代~40代にかけてある出版社の算数の教科書の執筆・編集を担当していましたが、この年になって再び若い先生方とともに数年前から算数の教科書の執筆・編集に協力しています。次回の改訂は戦後最大の改訂であり、教科書自体が大きく変わります。現在3種類(従来の形式、従来の形式とデジタル教材を半々に組み合わせた形式、完全デジタル教材のみの形式)の教科書を準備中です。子どもたちがハッと驚くような教材、知的好奇心を喚起するような指導法等の開発ができればと願いながら、若い先生方と議論を重ねています。時代の進展とともに教育内容はもちろん、教育方法・手段等も大きく変わってきます。この劇的な変化の時代を子どもたちは生き抜いていくことになります。
子どもたちにとっては、大人が見過ごすような何気ない光景や普段の出来事等も不思議に満ちた世界です。私たちの身の回りには、子どもたちの知的好奇心を喚起する場面はいくらでもあります。「不思議だなあ」と思う気持ちが子どもの内面を豊かに育んでくれます。私たち大人の役割は、そんな子どもたちの好奇心の芽を潰すことなく、支援していくことにあるような気がしています。何でもかんでも許容するという意味ではなく、たまには一緒に活動してみて、我が子がどんなことに興味をもっているのかを肌で感じることも必要かもしれません。これは、忙しいということを言い訳にしてきた、自らの子育ての大きな反省点でもあります。





