2026年10月号(育ちには、それぞれに違いがある!)
育ちには、それぞれに違いがある!
~自分のペースを守ることの強さ・大切さ~
園長 中村 洋志
心なしか、朝夕の風に秋の気配を感じる季節になりました。子どもたちはみんな様々な経験を通しながら確実に成長しています。ただ、その成長のスピードには個人差があることも事実です。特に、保育園では同じクラスでも、生まれ月によって成長のスピードに違いが見られることがしばしばあります。また、同じ月数でも個人差が見られることもよくあります。それは当然のことであり、何の不思議でもありません。
ただ親としては、理屈では分かっていてもその差が気になる気持ちもよく分かります。同じ兄弟姉妹で、同じ屋根の下で生活し、同じものを食べ、同じ方針で、同じように育てたつもりでも、同じようには育ってくれません。しかし、親としては、どうしても兄弟姉妹や同じ年頃の他の子と比べてしまい、焦ったり急かせたりすることがよくあります。中には、育児雑誌などで目にした情報や数値と比べ、一喜一憂することさえあります。私も、三人の子どもを育てましたので、その心境はよく分かります。兄弟姉妹といえどもそれぞれは違う人格を持ったかけがえのない存在ですので、冷静に考えれば理解できるのですが、子育ての真っ最中にはなかなかそんなことを考える余裕もないのが現状です。私自身も、兄と比較されて母親からよく「お兄ちゃんの半分あればいいのになあ」と言われたことを思い出します。それだけやんちゃな子だったのだと思いますが、それなりに傷ついていた記憶があります。
荘子の教えに、「直木先伐、甘井先竭(ケツ))」という言葉があります。「直木は先ず伐(キ)られ、甘井(カンセイ)は先ず竭(ツ)く」、即ち「材木にする時は、先ず真っ直ぐな木から伐採され、井戸も、先ずうまい水から飲み尽くされる」ということだと解釈されます。荘子は、それとは違った生き方の例として、「意怠(イタイ)」という鳥を挙げて違う生き方を説明しています。「意怠」という鳥は、バタバタと羽ばたくだけで、これといった能力を発揮できません。だから、ほとんど他の鳥の先頭に立つこともありません。ただ、餌をとる時は、先を争わないので仲間はずれにされることもありませんし、危害を加えられることもないのです。自分のペースを守りながら生きることは、なかなか難しい現実があることも事実ですが、「意怠」のような生き方に学ぶこともあるような気がします。解釈はいろいろあると思いますが、平凡だけど、周りに迷惑を掛けることもなく、自分のペースを守りながら生きることの強さ・大切さを思うこともあります。
とはいっても、子どもたちが望む望まないにかかわらず、やがて世間という未知の世界に踏み出していくことになります。難しいことだとは承知していますが、改めて子どもたちが巣立っていく社会の中を見据えて、自分らしく生き抜いていくための「生きる力の基礎」を培うことの重要性・必要性等を認識しています。せめて今の子どもたちのはじける笑顔が色あせることのなく生きていける世の中になることに期待するばかりです。





