園長だより 令和3年3月号

抱っこの宿題!~親子の触れ合いがすべての基本~

新型コロナウイルス感染症の影響はまだまだ続きそうですが、少しずつ春めいてきて、過ごしやすい季節になりました。あっという間に、令和2年度も最後の月を迎えました。
この一年間の保護者の皆様方のご協力に感謝いたします。子どもたち一人一人の成長には、目を見張るものがありました。四月から他の保育園や幼稚園に転園されるお子さんもいますが、それぞれの園でさらに逞しく成長していくことを心から祈念いたします。

かなり以前、広島県内のある小学校の一年生のクラスで「抱っこの宿題」が出て、話題になったことがありました。全国的に話題になったこともあり、幾つかの学校で同じような宿題が出されたようです。あるお子さんは、次のような日記を書きました。

せんせいが、「きょうのしゅくだいは、だっこです。おうちのひとみんなにだっこしてもらってね」といいました。ぼくもみんなも「ええーっ」とびっくりしました。だっこのしゅくだいなんてはじめてだからです。なんかはずかしいとおもいました。いえにかえって、すぐおかあさんに、「だっこのしゅくだがでたんよ。しゅくだいするけえ、だっこして」とちいさなこえでいいました。おかあさんが,「へえ、だっこのしゅくだいでたん」とびっくりしていいました。でも、すぐ「いいよ」とにっこりしていってくれました。おかあさんが、すわってぼくをひざにのせて、りょう手でぎゅっとだきしめてくれました。おかあさんのからだはぬくかったです。「ぼくがおうちのひとみんなだっこしてもらわんといけんけん」といったら、おかあさんが、おばあちゃんに「だっこしてやって」といいました。(中略)おばあちゃんは「大きゅうなったねえ」といってくれました。(中略)さいごは、お父さんでした。お父さんは、いきなりりょう手でぼくのからだをもちあげて、どうあげしてくれました。ぼくのからだは、くうちゅうにふわっとうかんできもちよかったです。おとうさんはぼくをゆっくりおろして、ぎゅっとだきしめてくれました。おとうさんのからだはぬくかったです。(中略)さいしょははずかしかったけど、きもちよかったたです。(後略)

岩手県の小学校2年生のお子さんは、「おかあさんとだっこ」というタイトルで、次のような詩を書きました。

おかあさんに だっこすると 気もちいい おかあさんが ふわふわだからだっこ
おかあさんが いいにおいだから ゆらゆらしてくれて気もちいい
だっこして お話をする ぼくは 学校のこと 友だちのこと テレビのこと
読んだ本のこと おかあさんは ぼくが小さかった時のこと 生まれた時のこと
いもうとと だっこのとりあいになると かわりばんこに だっこする
いもうとがだっこしているとき ぼくはうしろからだっこする
おかあさんも だっこで元気が出るんだって これからも毎日 だっこしようか

双方とも大きな反響がありました。なんと言っても、親子の触れ合いに勝るものはありません。そのぬくもりの中で、子どもたちは安心して育っていくのです。親や家族等との触れ合いが、子どもたちの精神の安定に大きく影響していることは科学的にも証明されていますが、子どもたちも肌を通してそのことを実感しているのだと思います。父親との関係でも同じことが言えますし、祖父母や家族との関係でも同じことが言えると思います。そして、その体験は、何歳になっても心の奥深く刻まれています。子どもたちにとって、それぞれの家庭が「一番の居場所」であり、親が「一番頼りがいのある存在」なのです。「親子の触れ合いが、すべての基本である」と言われる所以だと思います。私たち職員も、様々な場での「スキンシップ」に心掛けています。親に代わることはできませんが、これからも、多くの触れ合いを通して、「喜んで登園し、満足して降園」できるように、子どもたちとの信頼関係の構築に努めてまいりましたが、まだまだ足りないこともあったのではないかと考えています。

私たち職員は、子どもたちに教えているつもりでも、実は、子どもたちから学んでいることはたくさんあります。子どもたちは「今」を懸命に生きています。その姿から学ぶことも多いのです。一年間、本当にお世話になりました。そして、ありがとうございました。出会った子どもたちと保護者の皆様方に心から感謝いたします。

園長 中村 洋志