園長だより 7月号

すぐ気が散るのは,なぜ?!  ~子どもの少しの成長を認め・励ます~

暑い毎日が続いていますが、その中でも,子どもたちは,懸命に「今」という時間を生きています。新型コロナウイルス感染症の完全な収束(終息)には、まだまだ時間がかかりそうですが、どの子も,輝く「いのち」を持ち,イキイキとした姿で毎日を精一杯生きています。実際,子どもたちの見せる「表情」は,私たち大人の気持ちを和ませてくれます。なかなか先行きの見えない時代ですが,いつも,子どもたちの未来が少しでも明るいものになるように願っています。

私自身のこれまでの経験の中で、保護者の方々の質問で多いのが,「うちの子は,集中力がなくて困っています。すぐ気が散るのは,なぜですか。」というものです。一般的に集中力がないといっても,いろいろな意味があるといわれています。「じっとしていないで,身体をいつも動かしている」とか「気が散り,一つのことに集中できない」とか「多くのことに関心を持ちすぎて,飽きっぽい」とか様々です。しかし,子どもは本来,移り気であり,落ち着きのない存在です。新しいものに関心を持ち,珍しいものに注意を向けるのが子どもの特徴でもあるからです。よく観察していると,子どもたちの興味の対象は,次から次へと移り,飽きることを知りません。大人から見れば,集中しないこのような行動も,子どもたちにとっては,当たり前の行動なのです。このような探索活動を通して,内在する能力を発達させていきます。ひょっとしたら,「落ち着きのない行動の中に,発達の原動力があるのではないか」とさえ思うこと準備体操があります。

あくまでも,一般論ですが,幼児期の行動の中で,落ち着いていることばかりが,必ずしも良いことばかりではないようにも思います。慎重すぎて,なかなか行動に移せない子どもとか,物事にあまり関心を示さない子どもの方が,むしろ心配な場合があります。どの程度の落ち着きのなさかにもよりますが,大切なことは,その時の状況に応じた支援をしていくということだと思います。

一般的に,落ち着きのない原因には3つあると言われています。

  • 第一は,心理的な原因です。緊張し すぎるために,運動神経がうまく働かず,手が震えたり,つまずいたりすることがありますが,それが一見,集中力がないように見えてしまうことがあります。この場合は,「気を付けて」とか「落ち着いて」などと注意するのではなく,気を楽にしてあげることの方がいいと言われています。
  • 第二は,身体的な原因です。生活リズムの乱れや睡眠不足等による体調不良があると,自己コントロールが難しくなり,結果として,飽きっぽくなったり,じっとしておられなくなったりすることがあります。このような子どもは,生活習慣を見直せば,行動も改善されると言われています。
  • 第三は,環境的な原因です。とりわけ,子どもの周りにいる大人(特に保護者、保育士)からの影響は無視できません。実際,親が落ち着きのない態度をとると,子どもはいつの間にか真似をして,落ち着きのない性格を身に付けてしまうことがあることも指摘されています。この場合は、周りにいる大人たちの接し方を見直す必要があるのかもしれません。

子どもたちに,「落ち着きなさい」というだけでは効果はあがりません。大切なことは,「子どもが,いつもよりも少しでも長く集中できたら,褒めてあげる」ことです。何か一つでも集中することを覚えれば,それを認め・励ましていくことで成長していきます。それを繰り返すことで,他のことにも集中していけるようになるのです。まずは、大人自身がバタバタせずに,ゆったりとした気持ちで見守っていきたいですね。

園長  中村洋志