園だより

園長だより 9月号

親子の愛!   ~向田邦子さんの父親に学ぶ~ 

厳しい残暑が続く中、新型コロナウイルス感染症への対応もあり、なかなか気の休まる日がない毎日ですが、子どもたちは相変わらずパワフルに活動しています。そんな子どもたちを支援するためにも、これまで以上に保護者の方々との連携を深め、小さな一歩を見逃さず、一人一人のお子さんの健やかな成長を見守っていきたいと考えています。
先月号の「園長だより」に、ある保護者(父親)の方から、「園長だより拝読いたしました。何気ない一言が子供の人生に大きなプラスになるんだなと感銘を受けました。と同時に、何気ない一言が子供たちにとって大きなマイナスになる事もあるんだなと思った次第です。ちなみに私は幼稚園の先生の事を覚えており挨拶しに行きます。」というお便りをいただきました。私たち職員にとりましても有り難いお言葉であり、今の出会いが記憶の片隅にでも残るとすれば、大きな励みにもなると感謝の気持ちで一杯です。

保育園にお世話になり、約10ヶ月が過ぎました。この間に、子どもたちの成長ぶりを目の当たりにすることが多々ありました。例えば、ハイハイも出来なかったお子さんが、歩けるようになった瞬間に出会えたり、おしゃべりもできなかったお子さんが、言葉を覚え、自分の意思をしっかり伝えられる場面に立ち会えたりと、まさに感動の連続です。私たち大人からすれば当たりのことでも、子どもたちにとっては大きな飛躍の瞬間であり、格別な出来事なのです。保護者方々からの毎日のお便りからもその喜びを感じ取ることも多く、少しでもお役に立てているのかなと嬉しい気持ちになります。これからも、そうした感動の瞬間に数多く出会えるような保育園づくりに努めてまいります。

以前、鹿児島にゆかりのある著名な作家「向田邦子さん」(鹿児島市立山下小学校で学ぶ)の父親のことが紹介されていた新聞記事を読んだことがあります。
「戦争の末期、妹を学童疎開に出した思い出を向田邦子さんが書いている。まだ字のおぼつかない妹に、父親は自分の宛名を書いたはがきをたくさん持たせた。『元気な時は大きいマルを書いて毎日出すように』と言いつけたそうだ。初めは大きなマルが届いた。だが次第に小さくなって、いつしかバツに変わった。いたいけな印を、父親は黙りこくって見つめていたそうだ。(中略)妹は疎開先で病気になった。やっと帰ってきたとき、父親は裸足で玄関を飛び出し、抱きしめて泣いたそうだ。」という話です。お父さんと子ども

ハッとすると当時に、この話には、親子の関係を考える上での大切な何かが内包されているような気がしました。どんなに時代が進み、置かれている状況が変わろうとも、親子や家族の愛は変わらないと確信しています。ただ、最近の子どもに対する虐待や育児放棄等の報道に接すると、その思いが揺らぐこともありますが、子どもたちの健やかな成長に一番必要なものは、親子の絆であり、それを支える周囲の方々の直接・間接の温かいサポートであるということは言うまでもありません。

確かに子育ては思い通りにいかないことも多く、楽しいばかりではありません。しかし、子どもの成長していく姿を一番身近で体感できることは、何物にも代えがたい貴重な経験だと思います。子どもは、自分に寄り添い、真正面から対応してくれる人を信頼し、尊敬します。私は、父親が戦病死ということで早く亡くなりましたので、母も忙しい毎日でしたが、祖父母がいつもそばにいてくれました。今でも、そんな亡き母や祖父母に感謝しています。子どもは、自分を心から信頼してくれる人が一人でもいると、強く・逞しく成長していきます。私たち親や保育士等がその一人にならなければならないのではないでしょうか。子どもたちは、その背中を見つめて育っていくのです。

園長 中村洋志