園長だより 5月号

大きな河は、ゆっくり流れる!
~たった一つの言葉が人生を支えることもある~

新緑が目に映える爽やかな季節になりましたが、全国的に新型コロナウイルス感染症の感染拡大傾向が続いています。保護者の方々には、大切な子どもたちの命を守るために、これまで以上に感染予防へのご協力をお願いいたします。ただ、子どもたちはいつものようにエネルギッシュに活動しています。子どもたちの様子を見ていると、心の内側に温かいエネルギーを貰ったような気がします。子どもは、ただそこにいるだけで周りを豊かにしてくれる存在です。健やかな成長を願わずにはおられません。

有り難いことに、全国各地に教え子がいて時折連絡をくれます。特に、ここ1年は新型コロナウイルス感染症の関係で、なかなか人に会えない状況が続いていることもあり、逆にメールや手紙等での連絡が増えたような気がします。最初の教え子は、今年還暦を迎え、その多くが定年となるため、頻繁に連絡をくれます。最後の教え子も45歳になり、社会の中堅として頑張っています。彼らの職業も様々で、TVのキャスター、医師、キャビンアテンダント、警察署長、大学教授、小・中・高校の教諭や管理職、看護婦長、弁護士、建築士、県及び市町村の行政職、会社経営者、農業経営者、事務職、会社員、商店主など多岐にわたります。しかし、会えばみんな職種も立場も関係なく、キラキラ輝く素敵な存在です。すぐに出会った当時に戻り、懐かしい思い出話に花が咲きます。

つい先日、広島大学附属小学校時代のY子さんという教え子から連絡がありました。低学年には縁のなかった私は、初めて1年生の担任を希望し、Y子さんたちと出会ったのです。広島大学附属小学校は、1年生から教科担任制でしたので算数の授業しか担当していませんでしたので、接する時間は少なかったのですが、休み時間や朝の会・帰りに会等でできるだけ触れ合いの時間を増やしました。広島の最後の2年間を彼らと過ごしました。本当に楽しい2年間でした。その後、鹿児島に帰りましたので広島での最後の教え子ということになります。彼女は、東大を卒業し、経済産業省に入省し頑張っていることは聞いていたのですが、先日、全国の医療機関にコロナワクチン用の冷凍庫を届ける総責任者として活躍しているとの連絡が入りましたので、メールをしたところ、「相変わらず負けん気が強い性格のままなのですが、さすがにいい歳なので、中村先生に教わった『大きな河は、ゆっくり流れる』という言葉を思い出すようにしています。必ず鹿児島にお伺いさせてください。」という返事を貰いました。35年前の言葉を覚えていてくれるとは、本当に有り難い話です。忙しい毎日の中で、ふと思い出したのかもしれませんが、感動するとともに7歳の頃のY子さんの優しい顔を思い浮かべました。電話もしたのですが、当時のY子ちゃんの優しい声のままでした。彼女は3年生の夏休みに、友達数人とわざわざ鹿児島まで訪ねてきてくれ、県内各地を案内し、楽しいひとときを過ごしました。素敵な教え子の1人です。彼女の成長振りを見ていると、すべての子どもたちに大きな可能性を感じずにはおられません。特に今年は、多くの教え子たちやかつての同僚たち等から、直接会いたいという便りを貰っています。新型コロナウイルス感染症が収束し、気軽にみんなと会える日が1日も早く来ることを祈っています。

何気なく聞いた言葉が、人に勇気を与え、生きることの支えになることがあります。たった一つの言葉が人生を支えることもあるのです。逆に、知らないうちに人を傷つける場合もあります。相手がいくら小さな子どもであっても、私たち大人が発する言葉は、子どもたちに大きな影響を与えます。天文館てんてん保育園と騎射場れいわ保育園は、優しい言葉の行き交う温かい職場でありたいと願っています。

園長 中村洋志