園長だより 5月号
子どもは成長していく存在! ~どの子も可能性を秘めている~
園長 中村 洋志
爽やかな風の吹く季節になりました。子どもたちは、相変わらずパワフルに動き回っています。その姿を見ているだけで元気をもらいます。日々成長していく子どもたちを見ていて、ふと以前読んだ藤尾秀昭著「心に響く小さな5つの物語」の中に登場するある少年のことを思い出しました。以下のような実話です。
鈴木先生は、小学校5年生の担任になった時、服装が不潔でだらしなく、どうしても好きになれない少年と出会った。
ある時、少年の1年生の時の記録に目が留まった。「朗らかで、友達が好きで、人にも親切。勉強がよくでき、将来が楽しみ。」とあった。間違いだと思った。
2年生になると、「母親が病気で世話をしなければならず、時々遅刻する。」とあり、3年生になると、「母親の病気が悪くなり、疲れていて、教室で居眠りをする。」とあり、3年生後半の記録には、「母親が死亡。希望を失い、悲しんでいる。」とあった。
4年生になると、「父は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、子どもに暴力をふるう。」先生の胸に激しい痛みが走った。放課後、少年に声を掛けた。「先生は夕方まで教室で仕事をするから、あなたも勉強していかない?分からないところは教えてあげるから。」少年は初めて笑顔を見せた。それから毎日、教室の自分の机で予習復習を熱心にした。授業で少年が初めて手をあげた時、先生に大きな喜びがわき起こった。少年は自信を持ち始めていた。(中略)
卒業式の時、一枚のカードが届いた。
「先生は僕のお母さんのようです。いままで出会った中で一番すばらしい先生でした。」
それから6年。またカードが届いた。
「明日は高校の卒業式です。僕は5年生で先生に担当してもらって、とても幸せでした。おかげで奨学金をもらって、医学部に進学することができます。」
10年を経て、またカードが届いた。
「僕はよく5年生の時の先生を思い出します。あのままでだめになってしまう僕を救ってくださった先生を、神様のように感じます。大人になり医者になった僕にとって、最高の先生は、5年生の時に担任してくださった先生です。」
そして1年。届いたカードは結婚式の招待状だった。「お母さんの席に座ってください。」
と一行、書き添えられていた。
私自身にも似たような体験があったこともあり、心に響いたのを鮮明に記憶しています。子どもたちは誰しも、大きな可能性を秘めており、大人の予測を超えて成長していく存在です。子どもたちは、様々な事情を抱えながら生活しています。しかし、誰か一人でもサポートしてくれる存在があれば、自ら立ち上がっていく強さ・逞しさを備えています。その誰かになれたらといつも考えています。