園長だより 5月号

子どもの内側に何を育むか!
~認知能力と非認知能力のバランス~

 園長 中村 洋志

新年度が始まりあっという間に一か月が経過し、木々の緑も一段と鮮やかで、子どもたちにとっては活動しやすい気候になり、まさに子どもたちの笑顔がはじける絶好の季節を迎えました。私たち職員も、子どもたちの健やかな成長を願いながら、いつものように取組を進めています。当たり前のことですが、我々大人(親や保育士・教師等)にとっては、子どもの健やかな成長が最大の関心事であり、喜びでもあることは間違いありません。以前から話題になり実践的な研究がなされてきてはいたのですが、最近改めて認識されてきているのが、「認知能力」と「非認知能力」という言葉です。

認知能力とは、「文字の読み書きや計算ができたりする能力等」のことであり、歴史的に見ても受験等に多く活用されてきたことから、親や保育士・教師等この能力を伸ばすことに高い関心があり、あたかもそれがその子のすべての能力のようにとらえられてきたことは事実です。ある程度数値化できますし、客観的に分析でき、他者と比較もできることから注目されがちです。ただ、幼い頃に文字等を早く覚え、計算が得意だったからといってその後の伸びに大きな差は見られなかったという統計等も散見されており、最近では、非認知能力とのバランスの在り方が話題になることがしばしばあります。

非認知能力(社会情動的スキル)とは、「何かに熱中する力、他者を思いやる心、気持ちをコントロールする力、やり抜く力等」のことであり、これを身に付けることが、将来の伸びに大きく影響するということも指摘されており、非認知能力の育成に力を注ぐ保育園・幼稚園・こども園・学校等も増えてきています。ただ、これは経験上、実感的には分かるのですが、客観的に分析することが難しいうえに、なかなか数値化もできませんので、何となく個々人の経験をもとに、それぞれが感覚的に捉えている傾向にあります。私自身も若い頃から「非認知能力」の育成については高い関心があり、いくつかの論文も書いたことがあります。特に乳幼児期においては、非認知能力(社会情動的スキル)の育成の重要性が認識され、様々な経験をさせることで子どもたちの感性を育むような取組も見られますが、これまでの教育・保育等に関する我が国の歴史的な経緯を見ても、ややもすると一方に偏してきた傾向も見られることから、年齢に応じた両者のバランスを意識した取組をする必要があるのではないかと考えています。今後のデータに基づく科学的かつ客観的な分析が待たれます。

子どもたちは、もともと私たち大人には及びもつかないほどの豊かな感性を持っていると感じることが多々あります。子どもたちは、身の回りの自然の移ろいや些細な出来事に敏感に反応します。かなり以前の調査ですが、朝日の昇る光景や夕日の沈む光景を見た子どもは、電車等で席を譲る傾向が強いという統計を見たことがあります。私は、あんなにも著名になった大谷選手が、ごく自然にゴミ拾いをする姿を見て、人間としての大きさとか豊かさを感じると同時に、どこかの時点で非認知能力を身に付けるための学びの機会があったのではないかと、秘かに思っています。私は、子どもたち一人一人に内在する豊かな感性や可能性等を信じ、目の前の子どもたちが、これからどんな大人として素敵に成長していくのだろうと想像し、期待しながら子どもたちと接しています。